彼らのその後

スピンオフにあたる「君とのその後」とは関係なく、「僕らのその後」の最後のちょっとあとだと思って下さい。
これにて、本編は閉幕です。
番外編は気紛れに続きます。
ちなみに普通に会話が成立しているように見えますが、サーナイトの通訳経由です。ちゃんといます。存在感ないけど。
 
 
風に花が揺れる。
「やっと、会えたな」
ルカリオの目に涙が浮かんだ。ずっとずっと探していた。
ルカリオは『約束の人』の眠る地にそっと花束を置いた。
 そんなルカリオから離れて、ニンゲンとポケモンたちが彼を見つめていた。
「…遅かったんだね」
 そうだ。ルカリオがそのニンゲンと出会ったのが、ずっとずっと昔の事なら、死んでいてもおかしくないのだ。
 時は残酷だ。
 そんなピカの言葉を否定したのはマニューラだ。
「違う、間に合ったのさ」
「分かってたの?」
「初めてその人間と会った時、その人間はもう大人だったそうだからね」
優しい風がルカリオの毛並みを撫でる。
 ルカリオはとうに彼が死んでいると分かっていたのだ。それでも約束を、心残りを、果たしたかったのだ。
「さて、行こうか。ここではアタイらはお邪魔虫だ」
彼女たちはそっと去り、ルカリオはひとり残された。
にこりとルカリオは子供っぽく満面の笑みを浮かべる。
「話したいことがある。今まで生きてきて俺は凄くたくさん冒険をしてきた。聞いてくれないか、俺の生きてきた道を」
たくさんの出会い、別れ。
感じた喜び、悲しみ。
溢れんばかりの思い出を語る時間はまだまだあるのだ。
ルカリオは墓の前に座り込んで、ゆっくり語り出した。



終幕:彼らのその後



チィによれば、彼女たちは神様と戦ったそうなのだ。
ポケモンだったときはレックウザも余裕だったのに、人間になったらダメージすら与えられなかったよ」
だけど一方的にボコられたそうだ。包帯だらけになるだけで済んだのは奇跡だ。
「あの偏屈じじい……」
神に何て事を言うのだろう。だいぶ苦労したらしい。
「『鍵』にも苦労したよ。でも、ちょうどいいタイミングだった」
向こうからこちらへ。
こちらから向こうへ。
 二つ世界の境界を超えたいという想いが、世界をつなぐ扉を開く鍵となったのだ。
「ありがとう、ルカリオ
 人間のいる世界へ墓参りに行くという目的を果たしたルカリオたちは、今日彼らの仲間たちの元に帰るのだそうだ。
「こちらの台詞だ。君には感謝してもしきれない」
 チィに手を伸ばす。チィはそれをぎゅっと握り返した。
「でも、けっこう大怪我させちゃったじゃない」
「あの程度なら問題ない」
「馬鹿言ってんじゃないよ」
マニューラが額に青筋を浮かべて、ルカリオの背中をひっぱたく。三日も意識不明だったくせに何を言うのだろう。
こきっ。いい音がした。ルカリオが崩れるように倒れる。
「こ、腰がっ……」
ぎっくり腰になったようだ。耳をたれてプルプルしてるルカリオを無視して、マニューラはピカに向かって軽く頭を下げた。
「迷惑をかけたね」
「ううん、いい経験になったよ。お元気で」
ピカの頭をわしゃわしゃと撫でて、マニューラルカリオをひょいと担ぎ上げる。
「アンタたちはいい救助隊だよ。頑張んな」
「……! うん!」
その姿が見えなくなるまで、ピカたちは見送った。
「寂しい?」
 チィがピカの背中を人差し指でつんつんとつついている。
「……ちょっとね」
あの二匹はこれからどうなるのだろう。
「ねぇ、あの二匹は──僕らにちょっと似てないかな」
「じゃあ、私もアラフォーでも結婚出来ないのか」
「そうじゃなくて」
きっと幸せになるのだろう。そうピカはこっそりと願っている。口に出したらマニューラに怒られそうだから、これは誰にも内緒なのだけれど。
(──さようなら、伝説の救助隊)
 それからちょっと後の話。
ここからずっとずっと離れた場所にあるポケモンたちの町があった。その外れ、ルカリオに似た形の建物からたくさんのポケモンの歓声が聞こえてきた。
「「お帰り、リーダー!」」
 彼らを待つポケモンたちがいる。彼らもリーダーを信じていたのだ。夢を叶えるのだと。そして帰ってくるのだと。
彼らの冒険もきっとまだ終わらないのだ。一つ冒険が終われば、また新たに始まるのだ。
 
 
 彼らのその後の物語が。
 

 

 

 


end
…さぁ、だいぶシリーズが貯まったからそろそろ推敲とか訂正とかしてホムペに上げようかな……時間かかるんだけど。