探検隊タベラレル番外編『チョコレートの行方』

時事ネタ。ふわもことスバメケムッソの小ネタ。相変わらずフウはただの空気です。
 
 
「明日はバレンタイン! チョコレート作るよみんな!」
「「おーっ」」
ミミロルのミミの声に答えてデンリュウのココとワタッコのフウはやる気のないかんじで腕を突き上げた。
ふわもこはわりと料理スキルが高いチームだ。ミミは三時のおやつにスイーツを欠かせないのだ。ないと午後から動かなくなる程度のスイーツジャンキーである。
弟子のスバメ達も三時のおやつにはご相伴させて貰ったこともあるのだが……片方は「俺、マトマのが好きなんだけど…」と努力値を下げまくる辛党で、もう片方は「美味しい匂いをさせると食べられそうで……」という反応であり、遠慮している。別に二匹とも甘い物が苦手というわけではないのだが。
「バレンタインか……旨そうな匂いがだな。な! ケムッソ!」
「ヒェッ!?」
 話を降られた隣のケムッソがちょっぴりびくっとしたのに気づくスバメではなかった。
 ふわもこの台所はバレンタイン戦争である。ほっぺたに跳ねたチョコをつけたミミがスバメにブンブン手を降った。
「義理チョコあげるよ! ミミは弟子にも優しいんだから! もちろん3倍返しね」
「いや、いらない」
「遠慮します」
ミミロル型の基地からやたら甘い香りが漂うものだから、道行く探検隊はくんくん鼻を鳴らした。
「でも、どうしてココたちもやってるんだ?」
「あたし弟がいるし、あげなきゃうるさいのよ。この時期になると誰かにチョコをあげやしないかと危惧して″ああやってる″のよ」
…ああやってる?
何をやってるのかわからないスバメ達だったが、ココが後ろを指差して半分くらい理解した。ジョナサンがいたのだ。姿を見るか見ないかのうちに引っ込んだが。
「……シスコンですね」
「二匹だけで生きてた時間が長かったせいなのかしらね。どうしてあんなバカに育てたのか昔のあたしを殴りたいわ」
そういいつつも甘やかしてしまうのが姉の性だろうか。溶かして、テンパリングして固めてデコレーションして綺麗に包装する。弟用の手の込んだチョコレートを作り上げて、次の義理チョコ作りの作業に移る。義理チョコはミミが最近迷惑をかけたポケモンに♀♂構わず配るというビジネス用である。
スバメケムッソには渡したい相手はいないの?」
「俺達は♂だぞ」
「あら、いいじゃない。友チョコ、家族チョコ、色々あるんだから。材料余りそうだし作ってみたらどうなのよ」
スバメはちょっと考えた。♂がバレンタインにチョコ作るのってどうなんだろう。……まぁ、いいやヒマだし。
「じゃ、やってみる。ほら、やろうぜケムッソ
「え、ええ〜」
 さすがにハートはないなと思ったので、絵心ある器用なフウの指導の元でスバメスバメの顔型の丸いチョコレートをいくつか作った。黒いチョコレートに青色のホワイトチョコとイチゴ味の赤いチョコレート。嘴は砂糖でできている。笑うスバメ、眠るスバメ、怒るスバメ
 対するケムッソマユルドカラサリスチョコレートだ。最初はビクビクやってたが途中から『ユキさんにそっくり!』とか『コノメみたいです!』とノっていたようだ。
 何事もやってみるものだ。心地よい達成感がある。チョコを作り上げたふわもこの三匹は留守をスバメに預けて、チョコの配達をペリッパーに頼みに出かけていった。
スバメケムッソはチョコをラッピングしたのはいいが持て余していた。かといって自分で食べてしまうのも勿体無なかった。
「どうする?」
「いや、私に聞かれても」
その時だ。下から見知った声が聞こえた。こっそりツリーハウスのふわもこ基地の上から二匹は下を覗き込んだ。
「コノメのやつ! イチャイチャしやがって! リア充爆発しろ!」
 チーム『ビートル』のストライクのアニスがやさぐれていた。彼がモテないのはこの性格が問題だろう。がっつきすぎなのだ。ちなみにコノメとは彼の仲間のドクケイルである。そして彼女がいる。
「まぁまぁ、落ち着いて」
「義理とはいえチョコいっぱい貰ってるやつに言われたくねーよ」
この時期アニスは荒れるようだ。仲間のスコルピのピンが困った様子をしている。アニスはプンプンしながらピンを置いてきぼりにして去っていく。
ケムッソスバメの二匹はひそひそと話をした。
「これじゃあモテないよなぁ」
「モテないでしょうねぇ」
「黙ってればイケメンなのになぁ」
「残念なイケメンって言うんですよ」
「俺さ普段あいつらとは仲良くねーけど、この時期のコノメとピンが可哀想になってきた」
「ですねぇ……」
ふとスバメは閃いた。ラッピングされたチョコレートを持ってニヤリと笑う。
「助けてやるか!」
「それはちょっと良心が…」
「いいんだよ、バレなきゃ」
その年、アニスの元にラッピングされたチョコレートがニ箱届いてビートルは例年にない穏やかなバレンタインが過ごせたことは言うまでもない。アニスはそれが♂から届いたとか恋愛感情ないとか知る由もない訳だ。
「……なんか逆にアニスさんが可哀想な気もしますが」
「嘘はついてないだろ?」
「そうですけど……」
「それに俺が食べたいのはチョコレートなんかじゃないんだ! な! ケムッソ!」
「ひぇぇえええ!!」





HAPPY valentine!
君に愛をチョコレートで。